アニメ 灰羽連盟 レビュー

とってもとっても久しぶりにレンタルDVDしました。
【灰羽連盟】と言います。1~5。
なんでかって、良いものだと言う感想をニコニコで多く見たから。
私が良いと思うものは、あんまりその手の批評が当てにならないんですが、
たまには信じてみるのも余興かと思い。

まぁ結論としては、ぬるい、ですねぇ…。
こうした作風、嫌いではないんです。
00年入ってから、この手のゆるいアニメやマンガが増えました。
エマ、ARIAなんかも。
嫌いではないんですが、好んで見るほど、スローライフに憧れる訳でもなく。
どうも「老人くさい」とか「ゆとりくさい」と感じてしまう。

ちょっと灰羽とは異なりますが、
「悪い人なんていない、悪人側にも事情があるんだよ」
といったお話作りは、勧善懲悪よりも非常に面白いのですが、
構成や見せ方、そし収束の方向に凄まじく気を使わなければいけません。
これがうまく行った作品は、驚くほど少ないのですねぇ。

エヴァ前、エヴァ後で何が変わったかというと、
精神面での帰結を主体とする内宇宙的終結が散見し、
また悪い例では「どれだけ風呂敷を広げても畳む必要はない」という風潮も出ました。
どれだけ戦争しようが、いがみ合おうが、泥沼の恋愛関係を繰り広げようが、
「主人公」の心さえ何らかの形で救われるか方向付けられれば構わない、そうした風潮。
何も解決しない作品よりは良いのでしょうけど、
何にしても「その手があったか!」的な広告代理店のステレオタイプな歓喜の悲鳴が
さんざめいて吹き荒れる時代がありました。

別に内宇宙に帰結ことが悪いわけではなく、
言ってしまえば少女マンガでは語り尽くされたほど散在した手法で、珍しくはないです。
現実に即していない自分(主人公)だけのエンディングを少年は認めないため、
だから少女マンガと少年マンガは違うものであるわけです。
そこまでのアニメは男性的なので、少なくともそのように作られてきたので、
エヴァのようなやり方を展開してしまったことは、
女性ファンを増やすことよりも、
男性ファンにそうした世界観を強制的に納得させる材料になりました。
決して良い意味ではありません。

そうした内宇宙を描着続けたツケが現在に来ているわけです。
そんなあやふやな世界をセルに乗せていれば、フラストレーションが溜まるのは道理。
過去に類を見ないほどの直接的なインパクトを求めるような
エンターテイメントが増してきているのは決して「ネタ切れ」とか「ゆとりどうこう」ではない訳です。
アニメを「子供のためのもの」から「商売道具」に昇華させて来たゆがみは、
当たり前のように驕って鬱屈するわけです。

TVドラマなんてのが既に良い例でしょう。数年前に崩壊しています。
何をやったところである一定数以上の効果は決して得られないまま減退していきます。
年に2本でもヒットすれば良い、くだらない世界に堕ちています。
俳優の劣化も原因なんでしょうが、
多岐に渡るエンターテインメントなんて当たり前すぎる現実で古参が勝ち抜けないんだから、
先細るのも当然。
アニメもゲーム然り、です。

さて、話が飛んでいっちゃいましたが、
この灰羽はそうした土壌で生まれたものだ、と。
非常に21世紀らしいワンクールアニメです。
繋ぎのように作られたようで、独自の世界観もしっかり持っている。
破滅が約束された閉じた世界でのんびりとしたのどかな風景が展開する。
平和な世界と異質な灰羽。独自のルール。多くを語る必要のない物語。

世界に対する謎は謎として残し、住人のドラマ性を強調させるやり方は
いかにも少女マンガチックでエヴァ後だと言えます。
免疫のついた視聴者にはこの作品に多くを求める事を早いうちに諦め、
ただ、日常をたゆたい、平和に潜む闇を共におののき、共有します。
その作風は好感が持てる一面、感性を刺激しなければ見るに耐えないモノでもあります。

端的に言うと、「そういう世界」を自作しておいて、
「そういう世界における悩み」をああだこうだと苦悩していく様は、
ただの創作活動で一発ネタなわけです。
それは悪いことではなく、結論が常に必要なわけではないのは前述で長々と書いたわけで、
「その手のたくさんあるうちのひとつ」でしかないのです。

お話は面白い。設定も良い。キャラも立ってるし、音楽も伸びやかで美しい。
やや冗長な流れも作風であり、
悪い人がどこにもいないというあり方も今風でそれこそが世界そのものであったりもする。
あげつらう点がまるでないのがこの作品の特徴であり、長所であり、欠点です。

言うなればぬるま湯の夢の中で、
自戒に悩みつつも夢からは覚めたくないと願う子供のように。
ただし、子供が見ても概念が強すぎて理解できない世界。
大人が見るには美しすぎて見るに耐えない世界。
誰に向けたお話なのか、それこそ誰でもいいからゆっくりして行きなさい、という世界。

この手の口悪いですが「時間つぶし」のアニメは久々に見ました。
時間つぶしとか言っちゃう時点で好きではないことが明白ですけど、
ただ単に私に合わない、というだけです。一応13話一気に見ましたけど。

設定劇が好きな私にとっては、これだけの異質な世界観を持っていて
この程度のゆるさですぼめて行く事が許せないわけですね。
「自分ならこうするのに」と思わせるだけの魅力を持った世界は、
もうそれだけで私を屈服しているのですけど。

さて世界世界と書いていて、キャラや物語はどうなのというと、
これが一番の問題。私にとっては。
1クールで考えれば、全て綺麗にまとまっています。構成もキャラも起承転結も。
ただ、綺麗過ぎるのが私には合わない。それこそ夢のように綺麗過ぎる。
内宇宙で意地汚い描き方をすればエヴァやナデシコのように落ちていきますけど、
逆にここまで「美しく悩む」のも非現実過ぎて、私には心が痛む。

自分の心の穢れが浮き彫りにされるアニメなのかもしれません。
決して高尚なものでも傑作なアニメでもないのですが、
またきっちりまとめ上げる気が初めから無い、むしろそういう作品ではないと言い切っているような
設定にも飽きれを通り越して感服したりしますが、
もうひとつ、自分にとっては「一年後には名前も忘れるだろう程度の存在」でしかなく、
しかしそれを望むところとでも言う「夢そのもの」を描いているわけですが、
まぁ佳作ですよ。良作では決して無いけど佳作。

心を鷲づかみにされるインパクトは皆無で、
この時代のこうした流れに自然発生のように生まれたアニメだといえます。
だからそれすらも「作風」だと言えてしまう懐の広さを持ったこの「灰羽連盟」は、
見る価値だけは、他の何よりもあるのかもしれません。

それでも、
やはり、もったいない、もったいない、と、どうしても思うのですよ…。

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